最近「ドライアイ」という言葉をよく聴くようになりました。では「ドライアイ」って何なのでしょう。この言葉は英語でdry eye、日本語で眼乾燥そのものです。
「ドライアイ」という言葉が流行り言葉のようになっていますが、何か目がおかしいとドライアイかも知れないと言われるほどです。
確かにドライアイは増えています。またドライアイは軽症から重症まで様々です。
ドライアイの原因は、今ではほとんどの職場や家庭にエアコンが普及し、夏でも冬でもエアコンを使っていますが、それによって室内の空気が乾燥していることが大きな原因になっています。その上に職場ではパソコン、家庭でもパソコンやテレビゲーム、外出していても携帯電話などを使う人が増えています。これらの機器は画像を長時間見続けるということになり、結果として眼が疲れたり乾燥するということになってしまいます。
眼の表面(角膜・結膜)は「涙」という液体(涙液)で覆われています。涙はどんな目薬よりも優れています。それは眼の表面を常に潤すという優れた機能です。涙は角膜・結膜を常に潤すために三層構造をしています。一番内側の層は角膜や結膜を常に覆うためにタンパク質でできています。中間層は水の層です。一番外側は油の層になっていて、涙の蒸発を防ぐようにできています。そして涙にはバイ菌やウイルスをやっつける力や、角膜に酸素や栄養分を供給する仕事もしています。涙ってなかなか優れていると思いませんか。このような優れた機能を持っている目薬はありません。
最近、コンタクトトレンズを外した後や寝る前に、薬液の入ったカップを眼にかぶせて、上を向いたり下を向いたりして眼を洗って、ゴミや細菌を洗い流すというのが流行っています。しかし先にお話したように、眼は涙という優れた液体で常に眼を潤しているのですから、それを洗い流してしまうのは決して良いことではありません。眼の病気があるときには眼を消毒液で洗ったり目薬を点けたりすることがありますが、それは眼の病気を治療するために仕方なく行っているのです。それ以外のときには目薬より優れた涙を洗い流さない方が眼のために良いのです。
ドライアイの話に戻りますが、パソコンなどの画面を集中して見続けると、まばたき(瞬目)の回数が減ってしまいます。まばたきが減ると、涙腺からの涙の分泌が減り、またまばたきによって眼の表面に涙を行き渡らしていた涙も減り、その結果、角膜・結膜が乾燥してしまいます。涙が減ると眼の表面が乾燥するだけでなく、細菌などの感染にも弱くなってしまいます。
ドライアイの症状は、眼がゴロゴロする、眼を開いていられなくなる、充血する、涙がたくさん出てくる、痛いなどです。中には涙が出なくなってしまう重篤な病気もありますので、症状が続く場合には眼科で検査する必要があります。
ドライアイの治療の基本は、眼に潤いを与えてやることです。パソコンやテレビゲームをしているときには、画面に集中してまばたきの回数が減ってしますので、自分でできる第一のことは、意識してまばたきを多くすることです。涙に優る目薬はありませんが、市販されている人工涙液を点眼して、眼に水分を補給するのも有効な治療法です。しかし人工涙液には防腐剤が入っていることが多いので、できるだけ防腐剤が入っていない人工涙液を選んでください。特に涙の少ない人は、防腐剤が眼に残ってアレルギーなどの異常を起こすことがありますので気を付けてください。またドライアイだと思っていても、別な病気のこともありますので眼科専門医の診察を受けることをお勧めします。
「涙に優る目薬はない!」ということをお忘れなく。